キス



ヒバリと付き合い始めてもうすぐ三ヶ月になろうとしていた。
この三ヶ月間度々ピンチに陥っていたがその都度何度もそのピンチから逃れていた…しかし今回は無理かもしれない。

「ねぇ、何がそんなに嫌なの?別にいきなりセックスしようなんて言ってる訳じゃないんだけど…」
「…ッ!!おま…そんな事考えてたのかよ!?…っつーか余計するの嫌になった」
「元々する気なんて無かったくせに」

拗ねた様にぷいっと横を向くヒバリ。心なしか口が尖っているように見える…。どうやら「拗ねている様」ではなく完璧「拗ねている」みたいだ。
並盛の…いや、天下の雲雀恭弥様がこんな子供みたいな仕草で拗ねるなんて誰が想像しただろうか…。

オレも付き合うまではこんなヤツだとは思わなかった。それまでの印象通り天上天下唯我独尊男なのは変わりないが…。
でもオレがホントに嫌だって言う事をされた事はないな…そういえば…。
気付くとヒバリはそっぽを向いたまま、ボソボソと何事か言い出した。

「本当は僕の事好きでも何でも無いんじゃないの?付き合おうって言い出したのも僕だし、散々断られてもしつこくお願いしてようやく付き合ってくれるようになったし、その時も隼人から好きなんて言われてないし、もちろん付き合い出してからも一回も言われてないけど…お情けで付き合ってくれてるんでしょ?」

コイツこんな事考えてたのかよ?って言うか何か…さすがに可哀相になってきた。
別にお情けなんかじゃなくて…まぁ、始めはあまりにしつこいヒバリに嫌気が差してつい「付き合えばいいんだろっ!」なんて勢いで返してしまってんだけど、今では一応オレだって、その…ヒバリの事…す、す、す…好き、だし…。まぁ恥ずかし過ぎてヒバリ本人に伝えてないけど…。
でも、確かにオレみたいな態度のヤツと付き合ってれば不安になるよな。

「否定してもくれないんだね…」

オレがグルグルと思考の渦に嵌っていたせいでヒバリの問い掛けを否定するの忘れてたぜ。

「あ、ごめん。そんな事ないって!」
「じゃぁキスくらいしたっていいでしょ!なんでそんなに嫌がるのさ!?付き合って三ヶ月だよ?これまで何も無いなんて!今時小学生のお付き合いだってもっと進んでるよ」
「おいおい、風紀委員長が、何風紀乱すような事口走ってんだよ?ちょっと落ち着けって…」
「キスしてくれたら落ち着く!」

子供か!?お前は!!

と突っ込んでやりたいがこれ以上コイツの神経逆撫でするような言動は慎んでおこう。
オレだって好き好んでトンファーを振るわれたいワケではない。

はぁ〜、と溜め息をついてソファの隣に座るヒバリの両肩を掴み、オレの方を向くように体の向きを勢いよく変える。
自分から正面に向けといてなんだが…恥ずかしくてヒバリの顔を直視出来ず、少し間をおき、ちらりと下から見上げてみた。

…見なきゃ良かった…。
すっげぇ期待の篭った眼差しをオレに向けてるヒバリ。
ヤメロ、そのキラキラした目…。

しかし、付き合いを続けていく以上、いつまでも逃げ続けられる事でも無い。
よし!俺も男だ。覚悟を決めてやってやろうじゃないか!

大人しく目を閉じるヒバリにゆっくりと顔を近付けていくが、あとほんの少しが遠い。
ドキドキと煩い鼓動を体全体から感じる。

あと少しの距離を詰める事が出来ずにいると、急にヒバリが動いた。

あ、と思った瞬間には、唇に柔らかい感触。

「君に任せてたら十年たってもママゴトみたいな恋愛だ」

悪びれた風でもなくペロリと自分の唇を舐めて言い放ったヒバリ。

な、何だ?その豹変っぷりは?
さっきまでの子供みたいなお前はどこに行ったーっ!?




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今日の1859第7弾


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