遠回り



今日こそは絶対にっ!

風呂に入って、歯磨きも済ませた。
準備万端でベッドの上に座り、ギュっと拳を握り締める。
心の準備も終わったところで、ちょうどヒバリが寝室へと入ってきた。

「さぁ、もう寝ようか」
「お、おうっ」

つい応えにも力が入ってしまい、ヒバリが訝しい顔をしたのが分かった。
まずい…。

「どうしたの?」

案の定オレの機微に敏いヒバリ。
いや、そうでなくとも分かるくらいに顕著な反応をしてしまっていたが…。

「な…何が?」
「いや、妙な気合が入ってるから」
「何でもない。…さっさと寝ようぜ」

少し納得いかないような顔をしてヒバリがベッドに上がってくる。
ベッドサイドにある電気を消して自分も横になる。
途端にヒバリから抱き込まれ、耳を舐められた。

「ねぇ、しよ」

きっ!きたっ!!
今日こそ!という決意を胸に秘めていたが、とうとう行動に表すべきときがきた!
ゴクリと唾を飲み込んでヒバリからの誘いに返事をする。

「…いいけど」
「えっ!?」

ヒバリにしては珍しく驚いた声を上げて、オレの両腕を掴んだまま身を起こした。
上から心配そうな表情でオレの顔を覗き込む。

「なんだよ?」
「だって、君が素直にいいなんて言うから…」

まぁ、確かにヒバリとこういう事をする関係になって、毎回あれこれ理由を付けて拒んでは、結局致されるという事の繰り返し。
素直に頷いた事等一度も無かったような…。
いや、別に嫌って訳じゃないけどさ、毎回だとさすがにちょっとな…等と思っているが実際断れた例がない。

「あのさ…」
「何?してみたいプレイでも見付けてきたの?」
「ぷ、プレイって言うか…」
「内容によっては付き合ってあげない事もないよ」
「ホントかっ!?」

ヒバリの言葉で光明が射した。
それに力をもらって勇気を出して。

「きょ、今日はオレに上をヤらせて欲しいんだけどっ!」

勇気を出して、言った言葉…


「ダメ」

しかし、それは素気無くヒバリに却下されてしまった。

「な…何でだよ!?たまにはオレにヤらせてくれたっていいだろっ!だいたい何でお前ばっか突っ込む方なんだよっ!?」
「ダメなものはダメ」

さっきは何を勘違いしたのかプレイに付き合うみたいな事言ってたくせにっ!

「毎回なんて言ってねぇだろ…最初からずっとお前ばっかじゃんか」
「だって僕は君を可愛がりたいんだ。それに僕が受けなんて有り得ない」
「お、オレだってお前にそういう気持ちになる事だってある…」

語尾が段々小さくなっていったのは仕方あるまい。
普段こんな事口が裂けたって言わない。
でも、ここで言わないと一生入れられる方だ。

しかし、そんなオレの一大決心をヒバリはあっさり一蹴した。

「あのね、ここは『ヒバ獄』サイトだよ!君が僕の前や上や左に来るって事は有り得ないの!」

その言葉で打ち砕かれたオレは、やはりいつもと変わらずヒバリに頂かれてしまった…。



そっか…オレってここで対ヒバリじゃ童貞のままなんだ…。
だからと言って、他のヤツとなんて思えないオレって、意外にヒバリの事好きだったんだなぁ…。
恥ずかしいからヒバリには言ってやんねぇけど…。

「おやすみ…ヒバリ…」




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今日の1859第16弾


2008.11.10 1859net

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