期限付き



11月最後の日。ヒバリがオレの家に持ち込んだツリーの形をした小物入れ。
そのツリーには1から24までの数字が書いてある小さな引き出しが並んでいた。

ヒバリはオレに「毎日数字の通りに開けていってね」と言ってそれを手渡した。


翌日12月1日の朝、ヒバリに言われた通りに引き出しを引くとそこにはチョコレートが入っていた。
更に次の日、2日はハンカチだった。
12月3日はガム。
どうやらクリスマス・イブまで毎日続くプレゼントらしかった。

ツリーの小さな引き出しを開ける朝。
今までの小さな贈り物とは趣きの違うもの…紙切れ一枚が折り畳んで収められていた。
開いたそれには几帳面そうなヒバリの文字。

『キッチンの一番右端の引き出し』

その簡単な指示に従って開けたキッチンの引き出しには暖かそうなマフラーが入っていた。
どうやら引き出しに入らない類のプレゼントは、事前にヒバリによって仕込まれ、ヒバリからの指示書によってオレへと渡されるらしい。

ツリーの贈り物初の大物であるマフラーを身に着けて十代目のお宅へと向かう。
十代目から「よく似合ってるね」と言われ、ヒバリとの関係を知られている訳ではないが、恥ずかしさと…嬉しさで顔が赤くなり、更に校門で服装チェックを行っていたヒバリが、オレを見てこっそり小さく笑ったのを見て再び顔が赤くなった。お陰でオレをよく暖めてくれるマフラーだった。

一日一回開けるその引き出しの中身は、それがどんなに些細な物であっても一日オレを嬉しい気分にさせてくれた。
毎朝、引き出しを引いて、中身を確かめる楽しさと幸せ。
冬の寒い朝に、ほっこりとオレを温めてくれるヒバリの小さなプレゼント達。

一体ヒバリはどんな顔で、どんな気持ちでこれらの贈り物を選んだのだろう?
これを選んでいる間は少なくともオレの事を考えてくれてたって事だよな?
それをオレはとっても嬉しく思うんだけど、ヒバリに対してどうしても素直に自分のそういった気持ちを表す事が出来ないオレ…。
オレがヒバリからのプレゼントで日々幸せをもらっているようにオレも何か返せればいいんだけど…。


毎朝引き出しを開けていく。
24日が近付くにつれ、もうすぐこの毎日の嬉しい贈り物が終ってしまうのかと思うと寂しくなってしまう。
開けるのが勿体無いような…でも、開ける楽しみがその気持ちを上回って、結局抗いきれずに開けてしまうのだけれど…。

12月になってからのオレの一日は、ベッドサイドのチェストの上に置かれた赤と白のツリー、その小さな引き出しを開ける事から始まっていたが、ついに最後の引き出しを開ける時がきた。

中にはお馴染みとなったメモ用紙。最後のクリスマスプレゼントはどうやら小さな引き出しに入りきれない贈り物らしい。
折り畳まれたメモ用紙を開くと見慣れたヒバリの文字。でもそこに書いてある指示をいつものように即理解する事が出来なかった。

だいたいいつもは自宅なのにオレが足を踏み入れることが少ないキッチンや、滅多に開けない収納棚等が指定される事が多かった。なのに今回の指示は…。


『君のとなり』


オレのとなり?

キョロキョロと首を振り視線を彷徨わせるていると、寝ていると思っていたヒバリが同じベッドに横になったまま、何故だか楽しそうにオレを見ていた。
手招きされて、先ほど起こした体をもう一度横たえそのままヒバリに近寄ると、ヒバリに手を取られ指輪を嵌められた。そうしてその指輪にヒバリからのキス。
オレは真っ赤になる顔を自覚した。…やっぱりヒバリの贈り物は冬を感じさせない程にオレを温める。

「Buon Natale ………って言うんだっけ?」

そう言って笑ったヒバリ。
最終日にすごいプレゼントをもらってしまった。

あの小さな引き出しを開ける日々は今日で終わってしまったけど、隣にいるヒバリはきっとこれからも毎日オレに贈り物をくれるんだ…それはオレを幸せにする、ずっと続くプレゼント。



「Buon Natale ヒバリ」

オレもお前に幸せを。
まずはその願いを、この口付けにこめて…。




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今日の1859第29弾


2008.12.24 1859net

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