獄寺隼人の1日



最近のオレの頭の中はある一人の男によって、その大半を占められていた。
ふと気付くとアイツの事ばかり考えている気がする…んじゃなく実際そうだな…現に今だってこうやって考えてるし…。

美味い物を食えばアイツにも食わしてやりたいとか。綺麗な景色や絵を見るとアイツが見ても綺麗と思うだろうか?とか。買い物に行けばアイツに似合いそうなものに自然に目がいくし、実際それを買って渡したり。偶然見かけた野良猫の面白い行動、十代目の素晴らしい行いについて…兎に角オレの一日の行動や思考、その全てにアイツ…ヒバリが介入してくる…。

少し前からオレはヒバリと付き合い始めるようになって…まぁ、その前から好きだと言う感情はあったので、正確にはヒバリの事が気になり出した当初からこの調子だ。

ヒバリの事を意識する前は一体どんな事を考えて過ごしていたんだろう…?

だって一日にコイツの事を考えてる時間って相当あると思う。
以前は十代目の事とその他の事って感じだったと思うんだけど…今じゃ、ヒバリの事と十代目の事とその他の事って感じだ。そう考えると、ちょっと右腕として問題有りなんじゃないだろうか?と少し焦ったりもする。



「難しい顔してる」

不意にヒバリに眉間を撫でられ、驚いて顔を上げた。

「何考えてるの?」

緩やかな笑みを浮かべたヒバリに優しく問われ


「お前の事」


するりと、無意識に口から音が出ていた。



「「え」」


シンクロする声と表情…お互い驚いた顔を見合わせた。
そうして驚いた顔に喜色が顕になるヒバリと、熱を持つオレの顔。

「…っ、いや…そうじゃなくて!…」
「違うの?」

深い闇色をした綺麗な瞳に見詰められては、隠し果せる事は出来ない。
否定したってヒバリの目はオレの全てを見透かしてしまうのだから…オレは白状するしかないのだ。


「ち、違わない…デス…」


ヒバリが本当に愛しいものを見る目でオレを見ていて…そのヒバリの視線に晒される事が恥かしくて思わず顔を背けるが、ヒバリはそれを許してはくれない。

「顔、見せて?」

熱い頬に冷たい指先が触れて、ヒバリの方を向くようにそっと手に力が込められた。

「いや…マジ無理なんですけど…」


恥かしくて死にそうで…そうして必死に探して、見つけて、逃げ込んだ場所は………余計にオレを苦しめた…。
背中に回した手。ヒバリの嬉しそうな気配が直に伝わる距離。真っ赤になっているであろう顔を見られたくなくて、オレがその顔を隠したのはヒバリの首筋。
咄嗟にとってしまった自分の行動が失敗だった事に気が付き、焦って、ヒバリから離れようとするが、時既に遅く…ヒバリの腕はすでにオレの背中に回されていて、逃げ出す事は出来ない。

ヒバリの首筋からオレの羞恥を余計に煽るような熱い体温と匂いを感じて、オレは酩酊したような目眩を覚えた。

日々オレの全てに侵食してくるヒバリ…全てがコイツでいっぱいになった時、オレは一体どうなるんだろう…。
ひどく魅力的な、それでいて恐ろしいような、毒入りの甘い誘惑…想像して思わず震えたオレの体。回されたヒバリの腕に力が込められた。

お前の所為だ…責任取りやがれ。心の中で呟いて、オレは強張った身体から力を抜いて、その身を…全てを、ヒバリに委ねた。



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今日の1859第34弾


2009.1.29 1859net

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