きらり



これで何度目の事か分からない。
並盛中の朝の恒例行事と化してきている校門前の攻防…風紀委員VS獄寺隼人。
着崩した制服に、大量に身に付けられた装飾品。
挙句咥え煙草…これで校門を潜ろうというのがそもそも間違いだ。

今日は委員長が直々に立ち会っての風紀指導の日。
そう易々と校内に入れる訳も無く、委員長と獄寺の攻防はどんどん激しさを増し二人はとうとう其々の武器を取り出し構えて対峙した。
委員長のトンファーによる攻撃を何度か受けつつも決定的な一撃を受ける事はなく、一瞬のタイミングを狙って獄寺がダイナマイトに火を点け放る。

並盛中…いや並盛町内で、すでにこの爆発音が鳴り響いても驚く者は居なかった。
そして、今までもそのダイナマイトによる攻撃が委員長にダメージ与えた事等無かったのだが、今日はいつもと様子が違った。

煙幕が晴れて窺えた委員長は…信じられない事に地面に片膝を突いていた。
未だかつて委員長のそんな姿を見た事等無かった。
そしてそれは対戦していた獄寺にも衝撃的だったらしく、普通ならばここで一気に畳み掛けての攻撃へ移行するはずなのに、両手に幾つものダイナマイトを持ったまま呆けた顔で委員長を見ていた。
委員長の側に駆け寄ると、地面には血痕が見られ委員長が何らかのダメージを負った事が分かった。

膝を突き顔を俯けたまま小刻みに震える委員長の身に手を伸ばす。
獄寺も焦った様子で此方へと近寄ってきていた。
そうして俺の伸ばした手が委員長に触れる寸前だった…

「…君…そのへそは…何なの?」
「へ?」
「君のへそだよっ!」

委員長が鋭く問い掛けているがその意味が分からず、一体何の事だ?と訝しんでいると、獄寺が「あぁ!」と声を上げた。

「これの事?」

そう言って自らのシャツをペラリと捲り上げる獄寺。
腰履きのパンツの所為で見えている下着と…委員長が言っていた「へそ」には…何やら目に付くものが…。
そんな獄寺の姿を見た委員長は「うっ!」と、妙な呻き声を上げ、手で顔を覆っていた。

「イカスだろ?とうとう、ヘソピ開けちゃった♪」

…獄寺のへそには黒い髑髏型のボディピアスが付けられていた。
自慢気に此方を見下ろし腹を晒す獄寺。
どうやら委員長は…爆風で煽られたシャツが捲れた際に獄寺のへそを見て鼻血を出してしまったらしい…。

「僕に内緒でそんなはしたないものを!」
「何でお前の許可が要るんだよ!」
「煩い!」

とうとう切れてしまったらしい委員長は、流れ出る鼻血もそのままに立ち上がると素早い動きでトンファーを振るい、獄寺の服を捲くった腹部へと殴打を加え彼の気を失わせた。
そのまま獄寺の襟首を掴みズルズルと引き摺って校内へと向かわれる委員長。

「後は宜しく」

襟首を持たれている所為でシャツが引っ張られ、晒される獄寺のへその髑髏。
その髑髏の右目に嵌った星型の石が、冬の澄んだ青空の下、不気味に輝いていた。



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2009.2.10 1859net

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