世界が終わる日に



「なぁ、もし地球が滅亡するとしたら、最後の日、お前何する?」

眠る寸前だった雲雀の耳に唐突な問い掛けが飛び込んできた。

複数掛けのソファ。
その両方の肘掛けに、それぞれ頭を預け、足は折り重なる様に、横になっている雲雀と獄寺。
雲雀が足方向に胡乱気な視線を向けると、質問を発した獄寺の手には、何かが地球に衝突する寸前の絵が描いてある雑誌があった。

「何?また下らない本読んで…」
「下らなくない!いいから!お前は最後の日何するんだよ?」

肘掛に預けていた頭を、上半身ごと勢いよく起こした獄寺。
その顔はまるで本当に地球が消失してしまうと信じているような表情で…。

下らない質問だと返しながら、答える気になったのは雲雀にとって獄寺が特別な存在だから。
獄寺以外の誰かが雲雀に対して同じ質問をしたとしても(もっとも獄寺以外の誰かが、雲雀に対して、こんな質問をしてくる訳が無いのだけれど)もちろん相手にしない。
そんな下らない質問に答えてやる程度には獄寺の事を好きだという自覚が雲雀にはあった。


「別に…並盛を見回って、此処に戻れば君が居る。…いつもと同じ。それだけだよ」

言うだけ言って、いつもの調子で欠伸をすると、そのまま目を閉じてしまった雲雀。
いつもと同じ…その言葉がどれ程の衝撃を獄寺に与えたのか全く意識もせず。

地球が滅亡する前に、いつか雲雀の言動で殺されてしまうんじゃないか…。
地球に衝突する小惑星並の破壊力を持つ男は、そんな事を露とも感じさせない、憎らしい程穏やかな寝息を早くも立てていた。
自分だけが振り回されている事に理不尽さを覚えたが、それ以上に嬉しいという感情が湧き上がってきて…雲雀から見られている訳では無いのに、手にした雑誌で顔を覆う。

世界が終わるその日、二人の関係がどうなっているのかなんて分からない。
本当にそんな日が来るのかも分からない。
でも、その日が訪れたとしたら…今日と同じように過ごしているという事だけは知っている…雲雀がそう教えてくれたから。



main




2009.7.22 1859Online

inserted by FC2 system