ヒバ獄来た!



ある日の休日。野球部有志と他校の女子と合コンをする事になった。
オレは別に興味無かったんだけど、どうしてもって頼まれて…まぁ、皆と騒ぐのは好きだし、いっか。って事で参加。
でも一人来られなくなったヤツが居て、急遽誰かを補充するってなった時、誰かがツナを呼べ、って言い出したんだ。


「山本っ!何で獄寺呼んだんだよっ!?」
「オレ等はダメツナを呼べって言ったよな?それが何で獄寺が来るワケ?」

オレの両隣に座ってるヤツ等が押し殺した声で詰め寄ってきた。
ちなみに女子の殆どが獄寺の方に行ってしまった為、男同士隣合って座っていると言う…開始早々失敗パターンな合コンだった。

「ツナはこういうの興味無いし、チビ達の面倒見ないといけないからって…」
「バカっ!女子が皆アイツにいっちゃうだろっ!」

野球部のレギュラー同士、いつもは心強い味方な両隣の友人は今や完全に拗ねてしまって、対面に座る獄寺を半眼で睨んでいる。
オレだってツナの代わりに獄寺が来るなんて意外だった。

だって獄寺こういうの嫌いだし。面倒臭がりだし。ツナの側を離れたがらないし…実際目の前に座る獄寺はご機嫌ナナメどころではない。
眉間の皺はいつもの五割増。消費される煙草もいつもよりハイペースで…でも、ちょっと気を使って女の子達の方に煙が流れないよう、斜め上あたりに息を吐いているのが、何だかんだ言いつつ優しい。
なんでも「10代目の代理として確り任務遂行してくるようにリボーンさんに言われた」から来たらしいけど…。

それにしてもあんなに不機嫌丸出しな男に怯む事なく近寄れる女子ってすごいよな…って、思わず感心。
やれ格好良いだの、瞳や髪が綺麗だの、どこの国の血が混ざってるのかとか、矢継ぎ早の質問にも気の無い返事。

「ねぇ。どんな女の子がタイプなの?」

って質問が出た途端、オレの右隣に座ってるヤツがその質問に被せるように答え始めた。

「あ!獄寺はね、女の子に興味無いの!」
「そうだよ。この子は僕にしか興味が無いんだ。だから、こんな下らない所に連れ出さないで欲しいな」

突然、場違いな程に低い声が聞こえて、急に獄寺が立ち上がった。
と思ったら、獄寺の背後…襟首の辺りをまるでネコの仔でも摘むようにして掴んで、獄寺の体を引っ張り上げていたのは……ヒバリだった。

後ろから獄寺の首と腹に手を回し、肩に顎を乗せた状態で場に居る全員を睥睨するヒバリ。

「君、こんな所で群れてるなんて…しかも男子どころか女子まで…どうやらお仕置きが必要みたいだね」

一頻り辺りを威嚇した後、後ろから回した手を獄寺の顎に添えて無理矢理後ろを向けながら、低く…甘い声で獄寺に囁いていた。
獄寺は顔を真っ赤にしながら、口をぱくぱく…まるで金魚みたいだ。
と言うか、ヒバリと獄寺ってそういう関係だったんだ……知らなかった…後でツナにも教えてやろう。

瞬間、場の雰囲気が凍り付いていたが、女子の間が何やら騒がしくなってきた。

「ちょっ!生BL」
「えー。ヒバ獄無いでしょ」
「何言ってんの!?熱いよ!ヒバ獄!!」

言ってる意味が全く分からない…ヒバリと獄寺が何だって?
そして、意味不明な事を言いながら、携帯のカメラでヒバリと獄寺を撮りまくっている女子達。

「君たち、それ個人の観賞用に留めておいてよ。流出したら咬み殺しに行くからね」

ヒバリはそれだけ言うと獄寺を抱えて帰ってしまった。
残されたオレ達はしばらく呆然としていたのだが、我が野球部の頼もしき仲間達は驚異の回復力で自らを立て直した。

しかし、獄寺も居なくなったし、これで無事合コンを再開出来ると思ったのも束の間。
女子達はヒバリと獄寺の話題で熱く語り合っていて、とてもじゃないけどオレ達がそこに入れる雰囲気ではなかった。

すごすごと店を出て、肩を落としながらトボトボと歩く友人達には「ほら!ヒバリと獄寺が付き合ってたら、オレ達が女子と付き合える可能性が上がるじゃん」と言う慰めの言葉も届かなかった。
う〜ん…じゃあ!

「オレ達には野球があるじゃん!」

歩みを止めた皆がオレを見た。
次第に潤んでくる皆の目。

「山本ーーーっ!大好きだ!!」

大袈裟過ぎ。
でも、皆元気出たみたいで良かった。

けどさ…往来で男に告白するのは止めような。
道行く皆さんの視線が痛いんだもん。



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2009.6.5 1859Online



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